総合事業とは?
総合事業には大きく分けて「介護予防・生活支援サービス事業」と「一般介護予防事業」があります。
「介護予防・生活支援サービス事業」とは、要支援者の訪問介護と通所介護(デイサービス)と、新たに実施される介護予防や生活支援を必要とする高齢者のための訪問型と通所型のサービスです。要支援者への訪問介護とデイサービスは、従来の介護保険制度から移行されたものです。
「一般介護予防事業」は、市区町村が住民の互助や民間サービスと連携し、高齢者の生活機能の改善や生きがい作りを重視した介護予防に役立つ事業のことです。それぞれの事業の具体的なサービス内容については、後程解説します。
総合事業は、介護保険制度の大きな枠組みの中にある事業ではありますが、要介護者や要支援者に対する全国一律の介護保険サービスとは異なり、各市区町村が主体となって行う事業の1つです(地域支援事業)。このため、サービスの運営基準や単価、利用料などは各市区町村が独自に設定することができます。
また、「介護予防・生活支援サービス事業」を提供する介護サービス事業者の指定は、これまで都道府県がしていましたが、段階的に市区町村に移っています。このように、総合事業は市区町村の裁量の幅が広く認められ、権限が強くなっているのが特徴です。
総合事業の特徴
総合事業の対象者
総合事業は「介護予防・生活支援サービス事業」と「一般介護予防事業」に分かれています。
「介護予防・生活支援サービス事業」を利用できる対象者は、
- 要支援者
- 基本チェックリスト該当者(介護予防・生活支援サービス事業対象者)
になります。
(2)の「基本チェックリスト」とは、高齢者が自身で生活機能に低下があるかどうかをチェックする質問リストのことです。日常生活の様子や身体機能の状態、栄養状態、外出頻度などを確認する25項目の質問で構成されています。
総合事業以前の介護予防事業にも基本チェックリストはありましたが、それは要介護認定を受け、非該当となった人が受けるものでした。総合事業になってからの基本チェックリストは、要介護認定を受けずとも、総合事業の利用を希望する65歳以上の高齢者であればすぐに受けることができます。該当者の認定までの時間も即日~3日程度です。
一方「一般介護予防事業」の対象者は、地域に住む65歳以上のすべての高齢者で、要介護者も含まれます。
総合事業のサービス内容
要支援者と基本チェックリスト該当者が利用できる「介護予防・生活支援サービス事業」の事業内容は、
- 訪問型サービス
- 通所型サービス
- その他の生活支援サービス
- 介護予防ケアマネジメント
に分けられます。なお、これまで要支援者が利用していた訪問介護と通所介護(デイサービス)は、総合事業に移行されてもサービス内容はそのままで利用できます。
1から4までのそれぞれの内容を詳しく解説します。
(1)訪問型サービス
介護専門職である訪問サービス事業者が提供する、これまでの介護予防訪問介護の内容に相当するサービスでは、要支援者は身体介護と生活援助、事業対象者は生活援助が利用できます。
市区町村が定めた研修を受けた人が提供するサービスでは、掃除・洗濯・調理などの日常生活支援限定の生活援助が利用できます。
地域住民やNPOなどが主体となったゴミ出しや電球の交換、簡単な掃除や洗濯などの日常生活支援サービスが行われます。
市区町村が主体となり行われる短期間集中サービスで、専門職が訪問し、運動機能トレーニングや閉じこもり指導などが行われます。
総合事業導入の背景
国が介護予防事業を大きく見直した背景には、いくつかの要因があります。
要支援者には、見守りや、生活上のちょっとした困りごとを解決するサービスなど、多様な生活支援サービスが必要だということが浮き彫りになってきました。介護保険の予防給付でこれまでにも掃除や買い物、調理といった家事支援サービスを提供することはできましたが、それだけでは必要なサービスを十分カバーできないのです。
一方で、そもそも家事支援に介護保険給付が必要だろうかという議論も起こりました。そして、介護保険給付が増え続けるなか、現状の介護保険制度を維持し続けるのが財政的に困難になるという背景がありました。
これらの課題を解決するためには、介護サービス事業所が提供するサービスに限らず、NPOや民間企業、ボランティアなど多様な主体によるサービスを充実していくほうが、効果的で効率的であると考えられるようになりました。
そこで介護予防事業の大きな見直しが図られたのです。要支援者だけでなく、これまで要介護認定を受けなかった高齢者にもサービスを拡大して提供することで、国民全体の介護予防につながると予見され、総合事業が導入されました。
在宅生活の前提となる調理・買物・掃除などの生活支援を確保する総合事業は、誰もが住み慣れた地域での生活を継続するための、医療・介護・予防・すまい・生活支援を柔軟に組み合わせて提供する「地域包括ケアシステム」の具体的な事業の1つとして位置づけられています。
しかし、地域で多様なサービスを整えていくためには、それを担う人材が育たなければなりません。専門職以外の新しい担い手を地域の中で見つけ出し、サービス提供を持続可能なものにする取り組みこそが、総合事業の鍵となるでしょう。
まとめ
総合事業は、高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けられるように、高齢者自身の能力を最大限に活かして、要介護状態になることを予防するためのしくみです。
事業の旗振り役は市区町村ですが、介護事業者をはじめ地域の企業や団体、NPOやボランティア、町会、そして住民などさまざまな立場の人たちが、このサービス事業に参画し、連携し合うことで、高齢者を支えていこうというものです。
いずれ誰もが高齢者になることを考えれば、あらゆる世代の人たちが安心してその地域に住み続けることができるためにも、総合事業の発展が期待されています。